<拾 珠 抄>

五官みな尖つてきたる薄かな 佳子
五官みな尖つてきたる薄かな 佳子
木の椅子の朽ちて秋思の溜り場に 佳子
木の椅子の朽ちて秋思の溜り場に 佳子

 

<10月> 【852】

 

  退院の荷物の両手風青し        粟屋紀佐子

  忘却の身は空蝉と母の言う        岡崎宝栄子

  ガリガリと飲むカルシウム夏の朝     香川川也子

  蟬の殻殻の上にも蟬の殻         鎌田 正彌 

  薔薇の字は厄介香りくすぐつたい    塚本みや子

  納骨や雨に重たき栗の花         中山勢津子

  山に還える山の畑や花うつぎ       弐百免啓子

  飯厚き路地の飯屋のにぎり飯       筈谷 美保

  雑草を口にする癖終戦日          平田香都子

  捩花の正面さがす白日夢          藤本智恵子

 

             ~”夕凪作品Ⅰから”~

 

 

  藍浴衣跳ねて二十歳の恋成就      高田久美代

  燦燦と吉備の道の野辺麦の秋       佐々木美登里

  羅の尼僧の経の透き通り          中野 和子

  太陽のしづくを曳きて黒揚羽        長尾良志子

  見下ろして見上ぐる棚田風涼し       安田 恭黒子

  

              ~”夕凪作品Ⅱから”~

 

  受難者の目を持ちたる鵜天仰ぐ       浦島 恭子

  もろこしや日の匂ひするややの髪       武藤 晴子

  電球がゆらりと揺れて夏まつり        藤綱美智子

  鑿跡の続く洞門青葉風            永井 勝弘

  黒南風やマイクロプラといふ得体      原田 久雄

 

            ~”夕凪俳句《白雲集》”から~

 

   


 

<9月> 【851】

 

 新茶汲む「おい」と呼ばれて半世紀      粟屋紀佐子

 ナイターの溜め息大き凡フライ         飯野 幸雄

 友もまた方向音痴路地薄暑           石田みつ子

 ひたひたと徴兵令か田水張る          川崎益太郎

 父の日やライスカレーに黄身ひとつ       柴田 和子

 冷蔵庫ムンクの叫び入れておく         すずき穂波

 御手洗の水たひらかに夏木立          竹下 玲子

 コロッケにソースたっぷり昭和の日        田辺 温子

 ドーナツの穴の向かうの薄暑かな        三上フミヱ

 有りたけの百合を死装束として          水口 佳子

 

           ~”夕凪作品Ⅰ”から~

 

 

 新緑や逆上がりしてしばし鳥          斉藤久美子

 少年のあはき焦燥卯波立つ           高田久美代

 縄張に戻り声高夏うぐひす            平石かよ子

 蟾蜍ときに優しき顔を出す            石川レイ子

 かけっこの傷は勲章半ズボン           佃  あや

 

           ~”夕凪作品Ⅱ”から~

 

  

 チューリップの弁当箱と行く青野        浜田 幸子 

 ときめきをぽんと押へて藍浴衣         有田 幸恵

 子らの祖母逝くや川蜷鳴いてをり        谷口 博望

 母の日やエノラ・ゲイとふ母の名の       佐藤伊佐雄

 新品の朝を賜る梅雨の晴            武藤 晴子

        

            ~”夕凪俳句《白雲集》”から~

 

                           

天の川水銀体温計はさみ  佳子
天の川水銀体温計はさみ  佳子
愛し合ふハンドルネーム西日中             佳子
愛し合ふハンドルネーム西日中 佳子

暑き日の万の視線に耐へてをる  佳子
暑き日の万の視線に耐へてをる  佳子
白昼を浮く夏蝶の眩暈かな  佳子
白昼を浮く夏蝶の眩暈かな  佳子

 

<8月> 【850】

 

 しやぼん玉ゆつくり育て風に乗す        淺田 洋子

 春潮や貝伸びきつてゐる時間          石川まゆみ

 廃線のレール賑はふ花吹雪           窪田 順子

 花疲れ玄関の鍵開けてより            田辺 温子

 紋白蝶忙しいのは私だけ             為安 恵子

 たんぽぽをうつかり踏んで罪増ゆる       塚本みや子

 囀やサラダトーストミルクティー          徳毛 佳美

 春の波何にぶつかつても光る           西村美和子

 夏来るオムライスにも帆柱を            水口 佳子

 切り爪のこんな処に五月闇             森野智恵子

 

               ~”夕凪作品Ⅰ”から~

 

 

 「すぐそこ」がなかなか遠いこぶし祭       川崎 里美

 新社員の緊張を受く名刺受く           安田 恭子

 四姉妹ゐさう木香薔薇の家            高田久美代

 新茶汲む一枚植ゑてまた一枚          齊藤たえ子

 蜜蜂や小さき草花はしごして            河野由美子

 

                ~”夕凪作品Ⅱから”~

 

 

 夏近し日向の風は牛の風              永井 勝弘

 白き蝶天地のあはひよりこぼる           浦島 恭子

 桜橤降る遠景に老余かな              佐藤伊佐雄

 ア行から辿る度忘れ春の塵             原田 久雄

 優しさうな人に道問ふ夏木立            武藤 晴子

 

              ~”夕凪俳句《白雲集》”から~

  

 

  


 

 <7月> 【849】

 

 二坪の店主の白髪さくら鯛          香川川也子

 何處へ行くあてなき春のコート買ふ     小西佐和子

 少年の脱皮うながす花の雲           竹下 玲子

 雲梯の臍出す子にも花吹雪          鎌田 正彌

 濡れ縁を日差し流るる余寒かな         小幡 酔歩

 風に棲む人の来て居る落花かな       伊達みえ子

 春ですね心いっぱい深呼吸          阿部貴代子

 惜春や眺めて遠きものばかり          的   美里

 バリケード必要ですか蜷の道          植木すみ子

 親指も袖口の中入園す             石井 晴江

 

               ~”夕凪作品Ⅰ” から~

 

 

 つきそふは烏だけなり春田打         齊藤たえ子

 菜の花のパスタ迷はず選びけり        高田久美代

 先達の仰ぎし峰や水の春            河野由美子

 雑踏へ吸ひ込まれたる春スーツ        石川レイ子

 さくら五分一輪車の子背すぢ伸ぶ       斉藤久美子

 

               ~”夕凪作品Ⅱ” から~

 

 

 春めくや本屋のレジの栞箱           叶堂三恵子

 アングルを決めて押す間の花吹雪        山城みや子

 捨猫の獣のそぶり藪椿               永井 勝弘

 修司忌の仏壇通り人のなく            佐藤伊佐雄

 はくれんや星を見上ぐる河馬の口        谷口 博望 

 

             ~”夕凪俳句《白雲集》” から~

 

 

      

 

白百合のかなしび深くあめしづく  佳子
白百合のかなしび深くあめしづく  佳子
夾竹桃咲き継ぐことをヒロシマは  佳子
夾竹桃咲き継ぐことをヒロシマは  佳子

鎖されし水塊熱帯魚を咲かせ  佳子
鎖されし水塊熱帯魚を咲かせ  佳子
夏手套本音にすこし毒ありぬ  佳子
夏手套本音にすこし毒ありぬ  佳子

 

<6月> 【848】

 

 あたたかし達磨ポストのある小路      石田みつ子

 耕しの向かう三軒Uターン          小西佐和子

 春昼の魚信待ちをり眠りをり         佐々木弘草

 いきいきと水の流るる鳥の恋         柴田 和子

 着任の署長は若し梅薫る           高杉 東三

 柔らかき和紙の光や雛納           田辺 温子

 ものの芽や滴の花の満開に          西濵恵美子

 荒涼と菜の花つづく津波痕          藤本智恵子

 摘草やいつか一人になっている       森  郁子

 春めくやまだ歩けると草千里         吉村 敦子

              ~”夕凪作品Ⅰ” から~

 

 

 花粉症の所為にしておくこの涙        川崎 里美

 卒業の二人を送る子十人            斉藤久美子

 下校道はいつも探検木の芽風         高田久美代

 母ちゃんの弁当飽きて卒業す         佃  あや

 被爆碑や風やはらかく土手青む        石川レイ子

              ~"夕凪作品Ⅱ” から~

 

 

 躓いた耳に微かな初音かな          永井 勝弘

 落椿待ちて鎮もる地の表            佐藤伊佐雄

 日曜日のましろき皿に春キャベツ       浜田 幸子

 受験終へよくしやべる子と昼餉かな      武藤 晴子

 春めくや長きまつ毛のナースゐて       叶堂三恵子

             ~”夕凪俳句《白雲集》” から~

 

 


<5月> 【847】

 

 泣きをるは被爆ドームの虎落笛         飯野 幸雄

 手漉和紙ほどに積みたる春の雪       柴田 和子

 春立つや退院の荷にカロリー表        中山勢津子

 ”青丹よし”西の東の塔日永          徳毛 佳美

 年新た自分の歳におどろきぬ         藤本智恵子

 受験子の内ポケットの陀羅尼助        小原 桂子

 風神と凧の気の合ふ野末かな         田中 恵山

 片耳に手をあてて聴く春の音         刀祢 紀子

 少しづつ縮まる時間寒桜           新本 壽子

 夕さりの風の尖りも春隣             森野智恵子

            ~”夕凪作品Ⅰ”から~

 

 

 子離れの背中押されて地虫出づ      石川レイ子

 連翹のはや灯をともす薄暮かな       河野由美子

 紺青の風あたらしき二月来る         長尾良志子

 肉眼で見ゆる微塵子水温む          安田 恭子

 末つ子はいつも横向き初写真         高田久美代

           ~”夕凪作品Ⅱ”から~

 

 

 凍星や父は戦地で見たと言う         下島 栄二

 おほどかに歌会始呼気吸気          佐藤伊佐雄

 年の豆鳩にも分けて老い二人         平田 洲子

 乳揺する天宇受売や初茜            永井 勝弘

 寒明や甥の一家のどつと来て          有田 幸恵

           ~”夕凪俳句《白雲集》"から~

 

 

       

初蝶にまだ下描きのやうな翅  佳子
初蝶にまだ下描きのやうな翅  佳子
人工知能にさびしさを問ふ蝶の昼  佳子
人工知能にさびしさを問ふ蝶の昼  佳子

日おもてに空足を踏む春のはへ  佳子
日おもてに空足を踏む春のはへ  佳子
海市より欠席通知すこし濡れ  佳子
海市より欠席通知すこし濡れ  佳子

<4月> 【846】

 

ショパンの曲耳にのこれり小夜しぐれ     安達 もとい

をんをんと惜しむ平成除夜の鐘        土井 清玉

わびすけや音なく落つる砂時計        徳毛 佳美

山茶花の垣根指切りそれっきり         刀祢 紀子

大空へほどけてゆけり初明り          内藤 鈴枝

さざ波は光を育て浮寝鳥             的 美里

内輪もめ丸くをさめて鏡餅             南 政之

蒲公英の絮とぶ妻の置手紙           村本 恭三

冬帽子まぶかに洩らしたる本音         森 郁子

白息のぶつかる朝の立ち話           森野智恵子

               ~”夕凪作品Ⅰ”から~

 

 

白居易の如く炉峰の雪見たし          高田久美代

日常のあふるる背後初写真           安田 恭子

寒凪の空広げつつ鳥の舞ふ          佐々木美登里

芸北の山の恵みや牡蠣を食ぶ         定成 俊明

土器を漕ぐや宇宙へ初目覚           石川 レイ子

             ~”夕凪作品Ⅱ”から~

 

 

十二月八日の句座や骨の鳴る         佐藤伊佐緒

湯豆腐の湯気も大事にすくいけり        藤綱 美智子

母と十数へる湯ぶね年歩む           浜田 幸子

冬ぬくしマンション街の無人駅          叶堂三恵子

さよならの友の一声雪に消ゆ          下岡美千代

            ~”夕凪俳句《白雲集》”から~


   <3月> 【845】

 

  開戦日朝の卵に黄身ふたつ      伊達みえ子 

  せせらぎはぎは子守唄なり山眠る   網本 章子

  詩心のつなぐ絆や銀河濃し      植木すみ子

  年の瀬やバイクで走る墨ごろも    甲島美智子 

  結願へ釣瓶落しの道急ぐ        佐々木弘草

  落葉焚ならぬ掟の世となりぬ      二宮千鶴子

  冬晴れやぺたんとなりし日本海    小幡 酔歩

  天気図は先ず子の任地冬の晴れ  藤川 里子

  何もかも老いにつながる日向ぼこ  加藤 淑江

  極月や大きく一つ息を吐く       南 政之

 ~”夕凪作品Ⅰ”から~ 

薔薇の芽の序曲赤子は生まれたか         佳子
薔薇の芽の序曲赤子は生まれたか   佳子
バレンタインデー心臓はひとつづつ  佳子
バレンタインデー心臓はひとつづつ  佳子

   手伝ひの子の声かろし年の市    高田久美代

   綿虫にしばらく肩を貸してやり     河野由美子

   1日に一度はのぞく冬菜畑       齊藤たえ子

   マドンナと昔騒がれ冬薔薇       斉藤久美子

   紅葉映ゆ川の流れに人波みに    安田 恭子

           ~”夕凪作品Ⅱ”から~

         

   初冬や欄間の竜の舞ひ上がり     原田 久雄

   くるりんと亀起き上がる小春かな       守屋 直子

   ウインドーを楽器で飾るクリスマス     叶堂三恵子

   牡蠣フライほほばる窓の外は海     廣藤景子

   店先に昨日の海と眠る牡蠣        永井勝弘

         ~”夕凪俳句《白雲集》”から~

    

パスワード忘れ野遊にも行けず  佳子
パスワード忘れ野遊にも行けず  佳子
ももちどり柱も臼も湖の底  佳子
ももちどり柱も臼も湖の底  佳子


2月> 844

 

 山路ゆく背に新米のにぎりめし   石井 晴江

 案山子たつ二畳ばかりの学習田   植田トモ子

 秋思なほ夕一便のバス送る     鎌田 正彌

 散紅葉まだよちよちが座り込む   楯 幸子

 大琵琶の淵の捨て舟葦枯るる     土井 清玉

 祝杯の洩れ来る屋台夕紅葉       長尾眞理子

 天の川老いの視力と心の目       西尾 智子

 言の葉をルーペに拾ふ虫の闇     三上フミヱ

 落葉踏み登高の子ら見守りぬ     南 政之

 茶道具の箱の結び目冬うらら     村本クニ子

        ~”夕凪作品Ⅰ”から~

 

 

 小春日に横たはる猫とろけさう    安田 恭子

 平成の秋を尽くせり大花野      田中美代子

 日だまりに影をまぎらせ冬の虫    竹内 睦枝

 潮騒が背にのこる秋思かな      石川レイ子

 わくわくを聞いて欲しくて黄コスモス 高田久美代

        ~”夕凪作品Ⅱ”から~ 

 

 

 雨の日の少しおもたき金木犀      浦島 恭子

 座布団を斜めに稚の良夜かな      佐藤伊佐雄

 稲の香を羽織りて村の寄り合いへ    守屋 直子

 ピュイと啼く鳥を探して十三夜     谷口 博望

 吊橋に半歩半歩や秋澄みぬ       原田 久雄

        ~”夕凪俳句《白雲集》から~

 

 

 

 

初蝶はひとさしゆびを銃と思ふ  佳子
初蝶はひとさしゆびを銃と思ふ  佳子
削除したはずの名前がそこに凍て 佳子
削除したはずの名前がそこに凍て 佳子

その前にふくろふのこと話さねば 佳子
その前にふくろふのこと話さねば 佳子
冬の虹たとへば臨終の窓辺  佳子
冬の虹たとへば臨終の窓辺  佳子

1月>  【843

 

 一ところ裳裾のやうにこぼれ萩  淺田 洋子

 秋空や蝶になりたきをんなのこ  柴田 和子

 登高や遥をみつめゐし頃も      西濵恵美子

 草の葉のゆれ秋蝶の重さほど    二宮千鶴子

 眼裏にかつての山河去ぬつばめ  弐百免啓子

 畳からソファーに移る夜長かな  藤本智恵子

 秋冷の父の動かぬ腕時計        藤本 陽子

 木の実落つさらさら髪の男の子  松本加代子

 星月夜洗ひ上げたる箸を立て    水内 和子

 蛇穴に入るたましひの置き所    水口 佳子 

       ~”夕凪作品Ⅰ”から~

 

  

  新涼や一駅歩く気にさせて       山形 義明 

  リセットができさう秋の雲見れば      高田久美代

  満月や100億円の月旅行         佃 あや

  縁側に兄もゐたはず木の実独楽    品川 映子

  木犀やまだまだ漕げるこんな坂     川崎 里美

           ~”夕凪作品Ⅱ”から~ 

 

  

  何とかに効くと言はれて新生姜     原田 久雄

  風邪に寝て気まま孤独となひまぜに  有田 幸恵

  ドアに吊る回覧板や秋湿         佐藤伊佐雄

  仏たち腕縦横に奈良の秋         浦島 恭子

  とめどなき秋思をシュレッダーにかけ  浜田 幸子

           ~”夕凪俳句《白雲集》”から~

 


 

<9月> 【851】

 

 新茶汲む「おい」と呼ばれて半世紀      粟屋紀佐子

 ナイターの溜め息大き凡フライ         飯野 幸雄

 友もまた方向音痴路地薄暑           石田みつ子

 ひたひたと徴兵令か田水張る          川崎益太郎

 父の日やライスカレーに黄身ひとつ      柴田 和子

 冷蔵庫ムンクの叫び入れておく         すずき穂波

 御手洗の水たひらかに夏木立         竹下 玲子

 コロッケにソースたっぷり昭和の日       田辺 温子

 ドーナツの穴の向かうの薄暑かな        三上フミヱ

 有りたけの百合を死装束として         水口 佳子

 

             ~”夕凪作品Ⅰから”~

 

 

 新緑や逆上がりしてしばし鳥           斉藤久美子

 少年のあはき焦燥卯波立つ           高田久美代

 縄張に戻り声高夏うぐひす           平石かよ子   

 蟾蜍ときに優しき顔を出す            石川レイ子 

 かけっこの傷は勲章半ズボン          佃  あや

 

             ~”夕凪作品Ⅱから”~

 

 

 チューリップの弁当箱と行く青野        浜田 幸子

 ときめきをぽんと押へて藍浴衣         有田 幸恵

 子らの祖母逝くや川蜷鳴いており       谷口 博望

 母の日やエノラ・ゲイとふ母の名の       佐藤伊佐雄

 新品の朝を賜る梅雨の晴            武藤 晴子

 

            ~”夕凪俳句《白雲集》”から~